廃棄物で化石燃料への依存を断ち切る
他業界や研究機関の協力を得ながら、パーストープは焼却によるエネルギー回収以外の方法で、リサイクルすることが難しい廃棄物の利用方法を見つける取り組みをしています。廃棄物を熱分解油に変換し、それを化学製品の原料として使用することは、化学産業が化石燃料への依存から脱却し、リサイクル性と循環性を向上させる道筋を作ることに役立ちます。
パーストープは石化原料のバージン品から再生可能またはリサイクルされた原料への移行を含む、Finite Material Neutral(有限資源の再生化)という長期的な目標を掲げ、環境負荷の低減に取り組んでいます。熱分解とガス化技術により、必要とする十分な量の原料を従来の石化由来から循環資源に置き換えることができます。
「これが成功すれば、現在エネルギーとして燃焼されている廃棄物を長期的な価値のあるものに変えることができることを意味し、また、長期間製品に炭素を閉じ込めておくことができます。熱分解とガス化によって、化石原料をどれだけ置き換えることができるかを語るのは時期尚早ですが、その可能性は非常に大きいのです。」と、プロセスシミュレーション及び設計のスペシャリストのSimon Fröjdは言います。
このプロジェクトでは、熱分解油が合成ガスにガス化されます。スウェーデン最大の合成ガス製造および使用企業であるパーストープは、熱分解油を処理するためのガス化設備を新たに建設する予定です。そこでこの熱分解油は合成ガス (水素と一酸化炭素の混合物) に変換され、現在の化石由来の原料に取って代わり、パーストープ製品の製造に使用されることになります。
「私たちは、化学産業の持続可能な変革を推進し、化石燃料への依存から脱却することを決意しています。他の方法ではリサイクルが難しい廃棄物の流れを再利用し、循環型社会に向けて社会を変革するために、私たちの産業は重要な役割を担っています。このプロジェクトには、たとえば原料として使用してきた天然ガスを代替するなど、非常に興味深い原料代替の可能性があります」と、パーストープのサステナビリティVPのAnna Berggren は述べています。
現在、熱分解油のガス化による合成ガスの生成についてさらに研究を深めるため、スウェーデンエネルギー庁からの資金提供を受け、スウェーデン国立研究所(RISE)によって実証研究が行なわれています。これまでのところ結果は良好です。現在プロジェクトが直面する課題の1つは、大規模なガス化装置に熱分解油として十分な量を供給できる単一の廃棄物源がないことです。そのため、いくつかの異なる熱分解油の特性を評価し、実験的にテストしています。もう1つの課題は、新製品に廃棄物ストリームの再利用を支援し、リサイクルが可能な場合は廃棄物を燃焼させないような規制を整備することです。